仏教

因果応報と六道輪廻 | 因果応報によって来世(六道輪廻)が決まるのだろうか

生前に、たくさんの罪を犯し地獄に落ちた犍陀多(カンダタ)という大泥棒がいました。

血の池地獄で苦しんでいる犍陀多(カンダタ)が、生前に蜘蛛の命を思いやり助けたことがあります。

そのことを知ったお釈迦さまは、天へ通じる一筋の銀色の糸を彼の前に垂らします。

しかし、その糸に同じように救いを求めしがみつく他の罪人たちを犍陀多(カンダタ)が振り落とそうとしたことで糸は切れてしまい、また地獄へ落ちました。

この一部始終を見ていたお釈迦さまは、とても悲しそうな顔をして立ち去りました。

芥川龍之介の『蜘蛛の糸』より

これは、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』という小説です。

生前に悪行を積み、死後地獄に落ちてしまった男が登場します。

こうした話にも仏教の「因果応報」の理(ことわり)を感じます。

因果応報とは、業(行為)の善悪に応じてその報いがあることをいいます。

よい行いをすればよい報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるとされています。

「因」は因縁の意で、原因のこと。「果」は果報の意で、原因によって生じた結果や報いのことをいいます。

そこで、因果応報の意味やその由来、また、現世や来世(六道輪廻)とのつながりを見ていきたいと思います。

因果応報の意味や由来、人生への影響

因果応報とは、善い行いをすれば良いことが起こり、悪い行いをすれば悪いことが起こるという思想です。

仏教の教義の一つであり、世界中の多くの文化で信じられています。

因果応報は科学的な根拠はありませんが、多くの人が信じておりその影響力はとても大きく、それを信じることで、人は善行を積もうとしたり、悪い行いを避けようとしたりするようになります。

因果応報は、人生をより良いものにするための一つの考え方です。

善行を積むことで、自分や周りの人を幸せにします。

また、悪い行いを避けることで、自分や周りの人に不幸が近寄ってこないようにします。

因果応報を信じることで、人生をより良いものに変えることができるかもしれません。

ウパニシャッドの著名な哲人ヤージュニャヴァルキヤの言葉に次のようなものがあります。

「業(カルマ)の思想は輪廻転生説と深くかかわることになる。

徳のある人は、(前世の)徳のある行為(業)によって生じ、悪人は悪しき行為によって生じる。このように業は単なる行為にとどまらず。

死後にも潜勢的な力となって残存し、人の来世の善悪のあり方を規定する」

因果(いんが)

原因と結果の併称。また、すべてのものは原因があって生じるという理法の意では、〈縁起:えんぎ〉に同じ。

「因果応報」. 中村元.『仏教辞典苑』第 二 版. 岩波書店,2002,p.56.

因果応報(いんがおうほう)

すべての行為(業:ごう)には必ず結果がこたえ報いるということ。原則は、〈善因楽果・悪因苦果〉であるが、一般的には、悪因苦果に関して語られることが多い。

「因果応報」. 中村元.『仏教辞典苑』第 二 版. 岩波書店,2002,p.57.

六道輪廻とは

六道輪廻(ろくどうりんね)とは、仏教における生命の転生(輪廻転生)のプロセスを説明する概念です。

この教義によれば、人間や動物などの生命は死後に別の形態に転生し繰り返すとされています。

衆生の生前のカルマ(行為)の結果として輪廻転生する6種の世界です。

つまり、生前の善悪によって決まる死後に行きつく六つの世界です。

六道輪廻

● 天道(てんどう): 幸福や喜びが溢れている世界

● 人間道(にんげんどう): 仏教の教えを修行する世界

● 修羅道(しゅらどう): 闘争や嫉妬、執着や欲望に囚われた世界

● 畜生道(ちくしょうどう): 恐怖や苦痛が常に支配する世界

● 餓鬼道(がきどう) : 飢えや渇きが尽きることのない苦しみの世界

● 地獄道(じごくどう): 苦しみや苦痛が絶えず存在する世界

六道輪廻では、個々の生命は自らの行い(業=カルマ)に基づいて次の転生先が決定されると考えられています。

仏教では、特に「人間道」を苦しみから解脱するために仏教の教えを修行(実践)する世界だと説きます。

輪廻からの解脱を目指し、悟りを開き六道輪廻を超越することが私たちの本来の究極的な生きる目的なのかもしれません。

なお、天道、人間道、修羅道を三善趣(三善道)といい、畜生道、餓鬼道、地獄道を三悪趣(三悪道)といいます。

因果応報、善因善果・悪因悪果

私たちの”いのち”(魂)は、現世の一代限りではありません。

善因善果、現世で積み重ねた努力は、死を迎えたからといって決して無駄にはなりません。

必ず来世につながります。

他方、悪因悪果、誰かを傷つけたり、命を奪ったり、酷い仕打ちをすれば、その報いを受けます。

必ず自分に跳ね返ってきます。

ABOUT ME
@kokei_amamiya
これまでチベットやインド、ネパールなど世界中の仏教・密教聖地を巡礼する旅をしてきました。そうして得た貴重な体験や経験をいかした様々な活動をおこなっています。希望の明るい未来を目指して共に前進!