十二合掌印の一つに「金剛合掌」があります。
両手の指を交互に交差させるムドラー(印相:いんぞう)です。
印契(いんげい)、密印(みついん)などと呼ばれています。
古代から伝わる手のポーズのことで、ヨーガや仏教、ヒンドゥー教などの宗教や文化、芸術、精神世界で広く用いられ、やがて仏教や密教にも取り入れられました。
今回は、「金剛合掌」についてお話ししたいと思います。
金剛合掌とは
金剛合掌は、十二合掌印の一つです。
特に、密教(秘密仏教)で用いる基本的な印相(いんぞう)、ムドラー(以下、印と表記します)です。
印にはたくさんの種類があります。
その母体となるものが「印母」(いんも)です。
印母は十二合掌印と六種拳印に大別されます。
右手は仏(界)、左手は衆生(界)を象徴し、仏と衆生の一体感や、仏の慈悲や智慧、救済や加護を表します。
両手をしっかりと組み合わせることで、金剛不壊(こんごうふえ)を意味します。
※ 金剛不壊(こんごうふえ)とは、ダイヤモンド(金剛石)のように、とても堅固で決して壊れないことをいいます。不壊金剛(ふえこんごう)ともいいます。
印は、単なる手のジェスチャーやポーズではなく、心身のバランスや調和、内面のエネルギーを高める効果などがあるとされています。
つまり、困難や苦難に直面した時、心の平静を保ち、冷静に物事を判断するための心強い味方です。
そして、印には大変深い意味、「教え」が込められています。
それは、真如の「理」と、それを悟る「智慧」です。
また、仏界(右手)と衆生界(左手)を表し、私たちが常に諸神仏と一緒であることを意味します。
「金剛合掌」は、私たちが常に「仏・菩薩・天部・明王」とともに存在しているという証(あかし)です。
人生にはさまざまな試練や困難が待ち受けています。
仕事のストレス、人間関係のトラブル、健康問題、経済的な苦境など、誰もがさまざまな難題や困難に直面します。
そんなときに、先ほどの「金剛合掌」の教え(理と智、仏界と衆生界)を思い出してみてください。
左右の指を交互に深く結ぶ「金剛合掌」は、まさしく仏界と衆生界が一つである象徴です。
それは、いつも私たちの一番近くで見守ってくださっているという深い意味が込められています。
したがって、そんな大切な手で、人を殴ったり、物を盗んだり、犯罪や悪事に手を染めてしまって仏様を悲しましてはいけないのではないでしょうか。
誰もが、困難な状況に陥ったとき、不公平を感じたり、不当な扱いを受ければ、怒りや憎しみ、不安や悲しみなどのネガティブな感情が湧き上がってきます。
しかし、だからといってこれらの感情に流されず、冷静な心を保ち、対処することで道が開き始めます。
そこで、平素から「金剛合掌」を結び、瞑想(内観)する習慣を身に着けることをお勧めします。
瞑想、特に内観を毎日おこなうことで、感情に振り回されず、客観的に、かつ冷静に状況を見つめ、物事を大きくとらえ、包容する力が養われます。
すると、どんな困難や苦難に遭遇しても、失敗や苦しみを経て試練に打ち克ち、その中で学んだことを教訓として、自己の心身が鍛えられ、成長し、より強い自分になれます。
困難な状況に直面したときにも、心の平静を保ち、冷静に対処することで、人生の質が向上し、自己成長の機会が増えてきます。
一朝一夕、こうした教えを実践することは容易ではありませんが、その成果は絶大です。
より充実した皆さんのかけがえのない人生を豊かに送るために、まず第一歩を踏み出してみてください。
皆さんのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
金剛合掌は、密教の基本的な手印の一つです。
両手の指を互い違いに組み合わせ、右手の親指が最も自分に近いように結ぶ印相(ムドラー)です。
最強のムドラーなどとも称されることがあります。
そこで、金剛合掌について、その意味や方法(結び方)、効果についてわかりやすく解説します。
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【参考】『高野山大師教会光寿支部』(外部リンク)
印相(いんぞう)とは
ムドラーの訳で〈印契:いんげい〉〈密印:みついん〉ともいい、略して(印:いん)という。また、音写して〈母陀羅:もだら〉ともいう。
密教では行者が本尊に印相をむすぶことによりその尊核との身体的同一を達成する身密行:しんみつぎょうとして重視された。
真言とともに用いるときは〈印言:いんごん〉という。印の結び方には〈十八印〉(十二合掌)(六種拳)などがあるが、秘密性を保つために、左右の両手(定慧:じょうえ)、各指(地・水・火・風・空の五大)に特有の名称をあてることもある。→三密。
「印相」. 中村元.『仏教辞典苑』第 二 版. 岩波書店,2002,p.58.