最近、またチベットのことを懐かしく思い出す。
チベットの密教寺院ではいろいろな瞑想をした。
しかし、最初はどれもこれも難しく、なかなか思うように成果が出なかった。
気持ちばかりが焦り、私には才能がないと思い悩んだ。
そんなある日、早朝の薄暗い本堂の中で静かに瞑想しているラマ僧の姿を見かけた。
ふとそのラマ僧と一緒に瞑想したくなった。
そして、向かい側に腰掛け目を閉じた。
すると、しばらくして月の光に包まれているような不思議な感覚になった。
それからというもの瞑想がとても楽しく感じる。
瞑想とは自分の内にだけに意識を向けるのではなく、他(衆生)とのつながりや、さらに仏(法界宇宙)を観じ、あるがままの自分の心を知ることである。
誰か大切な人たちのことを心に思い浮かべ、自他共の幸せを祈る。
そうすると、心がとても軽やかになる。
自己の利益と他人の利益を追求することが、真の幸福へとつながる。
やがて幸せへ通じる道が見えてくる。
合掌 天宮光啓
天宮光啓「チベット回想録」(死と再生)
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