他を照らし、その照り返しによって自分自身も輝く
チベットにはさまざまな伝説が残されている。
特に、チベット仏教興起の中心的な存在「密教行者パドマサンバヴァ」の伝承は実に興味深い。
八世紀の後半、仏教を広めるためにティソン・デツェン王(742~797))は、シャーンタラクシタの進言によって密教行者パドマサンバヴァ(蓮花生)をチベットに招いた。
この時にパドマサンバヴァの入蔵を阻もうと土着の魔神たちが次々に襲いかかった。
しかし、そうした魔性のものたちもパドマサンバヴァの強大な呪力の前では無力に等しく、
最後は呪縛・調伏され、仏法守護を誓う護法善神になったとされる。
パドマサンバヴァとお大師様はとても似ておられるように感じる。
絶対的な唯一無二の圧倒的な存在感、超人的な法力(神通力)を持ち、それを人々のために生かす、
神通・神通力(じんずうりき)
禅定(ぜんじょう)などを修めることによって獲得可能とされる、超人的能力のこと。
神通力、神力(通:つう)などとも漢訳される。
神足通、天眼通、天耳通、他心通、宿命通、漏尽通(六神通)など。
(参考・一部引用)中村元編(2002)『仏教辞典』第二版, 岩波.
そして、今もたくさんの人々の心の中に生きている。
他を照らし、その照り返しによって自分自身も輝く生き方。
これこそが本当の「神通力」、「加持力」、祈りの力の源なのかもしれない。
写真の右側は、パドマサンバヴァの尊像です。昔チベットの密教寺院で特別に開眼をしていただいた念持仏です。
そして、左側は頭蓋骨杯(カパーラ)です。その昔、悟りの境地、絶対的な真理に至るためのタントラ系の瞑想修行などで広くもちいられました。
20年間近く厨子の中に秘仏とし祭祀し、ある修法を不断行で続けております。
今年は宗祖弘法大師御誕生1250年、当光寿支部でも「発心儀礼」(得度式)を執り行います。
そこで、秘仏パドマサンバヴァを開帳し、お大師様の霊験・功徳と共に希望の光をあまねく世のため人のために。
生かせいのち
南無パドマサンバヴァ蘇婆訶
南無大師遍照金剛
合掌 沙門光啓
昔、大学院で大変お世話になった奥山直司先生の『チベットの密教と文化』を参考にさせていただいております。